2021年2月 | ||
2021.02.22 12:00 PM
今年は霜柱見ないなー、暖冬のせいかな?
自分が起きた時には解けてるだけかな? しかし水は不思議だね、ある気温から下がると氷になる。 何でも溶かしてくれてどんな形にもなる寛容で融通が利く液体が、 冷たく固まって異物をはじく塊になったりする。 そんな水を見てると、人間も社会も案外環境によって姿が変わるものかと思ったりする。 鷹揚だった人が、余裕がなくなると意固地でせこい人になったりする。 社会もゆるゆるだったのが、とげとげしくなったりする。 個人も集団も己が弱くなって、他の圧力から自らを守ろうとするときにその姿を液体から個体に変えるのかもしれない。 トランプ米大統領の壁や大ヒットした「進撃の巨人」なんてのを見てると、まさに社会が凍りだしているのかもしれないと思う。 人々は侵される危険を感じると壁を作り中に閉じこもり、 さらに壁の内側では独自の規範をたて、それに従うことを要求し、異質なものは排除する。 だけど同質である安心を求め、閉じこもった壁が常に狭くなっていくような社会に未来はあるのだろうか? 内と外を分ける豆まきが終わって次は「国」を祝う建国記念日だ。日本はどんな国になっていくのだろうね? 暖かい冬と裏腹に日本をとりまく環境は「寒い」。 今この国はボクには氷と水の入り混じった「氷水」のように見える。 中日新聞 夕刊 2020.2.10 掲載
2021.02.15 12:00 PM
二月である。
節分である。 しかし節分、だれが作ったか知らないが便利だね! 一年を正月や節分で分けなかったら日時はダラダラと流れ「今いつだっけ?」「さぁ?」なんて、 人の生活はなんともしまらないものになってただろう。 分けるって便利だ。 犬と猫を分け、その犬を柴犬やシェパードに分け、名前をつけて隣の犬と自分の犬とを分ける。 分けたらそれを並べる。大きい順、名前順、…確かに分けて並べればいろんなことがスムーズになる。 しかし人間のこの整理好きにはもっと本能に近い何かを感じるね。 例えば満天の星、きれいだなーと眺めてるだけじゃすまない。あれはさそり座、あれははくちょう座とご丁寧にお話まで添えて整理する。軽く便利を超えてる。 そして粘土だ。あのグニャグニャの粘土を目の前に置かれて無視できる人は少ないだろう。 たいていの人は何かを作ってしまう。ゴロゴロとのばしてひもにする人、器用に壷なんか作る人。なぜだ!? なぜ頼んでもないのに何か作る?
…きっと人は本能的に何かを曖昧なまま置いておけないんだろうね。 それが人間の発見、創造の源かもしれない。 だけどこの本能が、分けて並べて、そこに優先順位や価値づけをしだして、一歩間違うと…「差別」まであと少し。 よくよく気をつけないとね。 中日新聞 夕刊 2020.2.3 掲載
2021.02.08 12:00 PM
もう十二年、仲間たちと巨大な新年会をやっている。
四十組を超える出演者が夜通し騒ぐ「さるハゲロックフェスティバル」だ。 知り合いをたどって出演者を探し、ジャンルもバラバラ、 最後の最後までタイムテーブルも決まらない混沌の祭典。 このイベント、自分にとっては「奇岩」なのだ。 福井県の東尋坊や中国の佳林みたいな、計画性がなく、なりゆきでできあがった変なカタチの岩。 ただ長い間風雨にさらされて偶然できあがった我が身に「ありゃーこんなんなっちゃいましたー」なんて戸惑う奇岩たちの声が聞こえてきそう。 もちろん計画通り作られた立派な作品も素晴らしい。高い技術と強い意志の結晶。 だけど……ああ、自分はなんかそこに作者の「ドヤ顔」を思い浮かべちゃうんだよなー。 「作ってやりましたよ、スゴイでしょ」みたいな。たいていのことは思い通りにいかないこの世界、思わぬ結果に漏れ出る「こんなんなっちゃいましたー…」。 自分はその人の力の及ばなさを受け入れるそっちに、愛しさというかリアリティーを感じるんだよね。 なかなか思いどおりにいかないさるフェス、でもだからこそ今年もがんばろう! って思える新年会…などと言うことをどこかに書いたら、スタッフから「しりあがりさんが好きな奇岩風に皆頑張って作ってるんですよ」とたしなめられた。すまん! 中日新聞 夕刊 2020.1.27 掲載
2021.02.01 12:00 PM
今年も成人式が各地で開かれた。
コドモからオトナになる新成人をお祝いする式。 でも日本人てコドモっぽいって言われるよね。 かつてそこらへんがneoteny(ネオテニー)って言葉で説明されたりしてた。 「幼児性が残る成長」みたいな意味で、日本の精神性や文化の特徴を理解するのにも使われてた。 マンガやアニメの子供っぽい絵柄、 「カワイイ」の氾濫、他にも「甘え」や「恥」、 自己や信念が未確立なゆえに周囲の相対的な評価や刹那的な情動に惑わされやすい国民性。 一方、未成熟だからこそ環境の変化に対応できる進化の余地が残ってる…。 日本はネオテニーなのか?
だとしたらそれはマズいのか? 自分はそんなのずっとコドモでいいじゃないか! と思ってた。だって勇ましい「マッチョ」より「カワイイ」のほうが平和だし、 いつかは世界中が「カワイイ」になればいいと思ってた。
でも… 「カワイイ」ってのは基本的に愛でてくれる人が必要なんだよなー。 オトナにコドモは必要ないけど、コドモにはオトナという保護者が必要なんだよねー。 (多くの国や自治体で)強権的なリーダーが民主主義で選ばれる今は、世界的にオトナが不足していて、たくさんのコドモが保護者を求めてバブバブあがいてるのかもしれない。 そう言うオレだって保護者が欲しい。 コドモどころかジーさんだけど。 中日新聞 夕刊 2020.1.20 掲載
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