今、どのメディアも世界中からのコロナのニュースであふれてる。
医師たちの自らを元気づけるようなダンスや、皆が励ましあう様子など「人間ってやっぱりいいな」と思えるニュースの一方、買い占めやそれに伴う諍いなど、人の本性を暴くようなニュースも流れてくる。
そういえば昔「鬼か仏か?」みたいなテーマのマンガを描いた。食えない中年のミュージシャンが街頭でライブしながら「仏として死ぬか?鬼として生きるか?」を自問するマンガだった。
歌では食えない、もうこの歳では働き口もない。このまま真面目な良い人では生きられない、人を騙したり人から盗んだり、悪人になってでも生き抜くべきだろうか?みたいな短編だった。
日本人は震災の時でも暴動など起こらなかった一方で自殺者が多い。
鬼になって人を傷つけず、良い人のまま「仏として死ぬ」ことを選ぶ人が多いのかもしれない。なぜだろう?
良い人だという評判が他国より重要なのか?
豊かさに潰されて「死」に対する本能的な反発が薄れているのか?
だいたいホントに身に危険が迫ったらどこまで「仏」でいられるだろう?
ただの「トラブル嫌いの臆病」な自分はそんな時どうなるのか?
このあとコロナがどんな苦難を強いるか見当もつかないが「鬼か仏か?」などという選択をつきつけられる場面だけはマジでご免だ。
中日新聞 夕刊 2020.3.30 掲載