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KITA!!:Japanese Artists Meet Indonesia
開催日時 2008.04.19 - 05.18
カテゴリー  展覧会(グループ展)
場所 インドネシア ジョグジャカルタ他
主催 国際交流基金
インドネシアと日本の国交樹立50周年を記念して開催された展覧会にて、墨絵インスタレーション「オレの王国、今度は熱帯」を制作。ここ数年精力的に続けている、展示室を墨絵で埋め尽くすシリーズ。
「KITA!!:Japanese Artist Meet Indonesia」展は、日本のアーティストたちとインドネシアの人々が実際に交流し、お互いを刺激し合いながら、表現や想像の喜び、楽しさを共有するためのアートイベントとして2008年4月、インドネシアで開かれた。
現代美術家、漫画家、映像作家、ミュージシャン、ファッションデザイナー、ダンスパフォーマー、フードプロデューサーといった様々な分野で表現活動を行う24組約50名のアーティストたちが日本から参加。淺井裕介、宇治野宗輝、大石暁規、小鷹拓郎、近藤聡乃、シアタープロダクツ、志賀理江子、しりあがり寿、SONTON、高木正勝、チャンチキトルネエド、Chim↑Pom、都築響一、トーチカ、生意気、南風食堂、西尾康之、西島大介、八谷和彦、パラモデル、松本力、珍しいキノコ舞踊団、淀川テクニック、YNG(奈良美智+graf)といった面々が参加。プロジェクトも、ジャカルタ・バンドゥン・ジョグジャカルタの3都市で同時多発的に実施された。連日ワークショップやトークショーも開催、両国の漫画家8名によるコミック冊子までも制作されるほど大規模なものであった。近年では、アート界では異文化間の垣根が低くなり、ハイブリッドで枠にとらわれない表現が多数現れてきている。KITA!!展はそれを象徴するような展覧会と言えるであろう。

しりあがり寿作品のメイン展示会場は、ジョグジャカルタにあるJogja National Museum。
ここは元美術大学で、このKITA!!展が美術館としてのオープニング企画。日本で普通に考えられるような美術館ではなく、大学の校舎そのままといった雰囲気で、空調や専門の照明機器も無い空間だ。日本での常識にとらわれて、既成概念に凝り固まってしまうと、制作過程の全てが窮屈になってしまうかもしれない。
作家側も受け入れるスタッフ側も、全ての経験が初めての事ばかり。制作の過程でのさまざまな場面が楽しくもあり困難であったかもしれない。しかし、現地スタッフとのコミュニケーションが、作品を完成へと導き、また真の国際交流の役割も果たしているのだ。

展示室は、大きな入口が一つある長方形の教室。長い一辺には全面に大きな窓があり、そこからは多様な植物が植えられ、大きなガジュマルの樹が象徴的な庭が見える。窓は紙で覆わずその景色を活かしつつ、室内全てに墨絵を描いた。その絵はインドネシアのジャングルの様でもあり、混沌としたジョグジャカルタの街の様でもあり、見慣れた日本のような、まだ見ぬ未知の世界のようでもあった。
今までの室内すべてを和紙で覆ってしまうシリーズでは、“巨大な風船の中にいるような、その中で完結している小宇宙”をイメージして制作をしてきた。今回の作品も、同じように天井まで紙を貼り部屋全体で一つの世界観を完成させているが、大きく開いた窓により、鑑賞者はつねに外界を意識させられる。作品だけをみているつもりでも、目の端には景色が入ってしまう。また、光源がいっさい無い部屋は、外からの光の影響により、作品の表情を刻一刻と変化させてゆく。明るい日差しの時であれば、すべては鮮明で、薄墨のイメージや細部の書き込みもよく見える。日が傾く夕刻時、それらは闇に紛れ、鑑賞者自身も作品の混沌の中に溶け込んでゆく。そして内側と外界が入れ替わるような、同時に存在するようなパラドクスに陥らされる。作品の世界観を現実の世界に例えると、窓から見える景色は、私たちが属している社会であり、作品に描かれた世界は、外界に影響を受け常に変化してしまう人間の内面そのものではないだろうか。
しりあがり寿は、架空の王様の箱庭的世界であった王国シリーズを、異国の地で人間の本質を表現する作品へと昇華させてしまったのか。

制作過程においては、熱帯の気候が最大の問題となった。雨期と乾期の境目の季節だったため、気温も湿度も充分過ぎるほど高かった。大きな刷毛でダイナミックに描くことが、体力の必要な作業であることを認識させられた。描く事は、肉体労働なのだ。はしごの昇り降りだけで、汗が滲んでくるような状況下で、しりあがり寿は抜群の集中力をみせていた。描くことの快楽の前には、疲労など無いのであろうか。
また、朝は早めに作業を始め、昼は木陰で休息。日が落ちるまで絵を描いて、夜はゆっくり休む。人間として、健全で本質的な生活がそこにはあった。

作品の最後の仕上げは、作品の中にインドネシア語を書き込むこと。現地スタッフにお願いして、吹き出しの中にインドネシア語を書いてもらうが、10以上ある吹き出しの中には、見慣れない言葉も。「これ、なんて書いてあるの。」「意味はなに?」と言葉の勉強も追加して、作品完成。
作品が仕上がって、次回の作品について話をしていた時になにげなく言った一言が、「あまり近いうちに、また描くのは無理かも…」
王国シリーズに、ひとつの区切りを見つけたのかもしれない。
(written by Kobayashi m.)

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【しりあがり寿 in インドネシア Vol.1】
街の様子や、墨絵の制作現場が見られます。


【しりあがり寿 in インドネシア Vol.2】
しりあがり寿本人がカメラを回しながら作品を語ります。

動画/撮影・編集:小林雅子(Vol.2の撮影はしりあがり寿)
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