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しりあがり寿presents 新春!(有)さるハゲロックフェスティバル’09
開催日時 2009.1.17
カテゴリー  イベント
場所 新宿LOFT
主催 有限会社さるやまハゲの助
2009年1月17日。新宿LOFTにて異色の大イベント「さるハゲロックフェス’09」が開催された。
もともと「さるフェス」はしりあがり寿の事務所「さるやまハゲの助」の社内行事として、関係者が宴会芸のように音楽を披露する小規模なものだった。ところが3度目の開催にして構想が大きく膨らみ、また出場希望者も激増。さらに会場として大小2ステージを擁する新宿LOFTが使えることとなり、当事者たちすら想像もしていかなった晴れ舞台で、本格作な“ロックフェスティバル”の様相を呈することになったのだ!

出演したのは全38組。夕方5時から深夜3時まで、10時間ぶっ続けでメインとセカンドの2ステージが同時進行。その強引なボリュームもさることながら、「さるフェス」が幾多ある音楽フェスと一線を画するのは出演者の顔触れの多様さ……。いや、もっと正確に言うと、音楽を生業とするプロから普段楽器に触れることすらない素人までが入り乱れ、多様な音楽ジャンルのみならずお笑いや前衛パフォーマンスが並列する類まれな“ごった煮”感だろう。

冒頭は、主催者しりあがり寿とフェスの幹事たちによる即席ロックバンド「カンジズ」。スモークが焚かれる中、しりあがりがムーディーに「ムーンリバー」を歌い上げながらステージに現れる。軽い挨拶とともに、当日発表のシークレットアクトは松尾スズキが参加するTEAM紅卍だと告げられ、会場がどよめく。続いてしりあがりは「出演者のハードルを下げる!」と高らかに宣言。高校生バンドすら演奏しそうなSEX PISTOLSの「アナーキー・イン・ザ・UK」の直球カバーに突入した。そんな稚気を残した演奏すらも観客を勢いづけてしまうユルさこそ、いま思えば「さるフェス」が凡百のフェスと違う特別な地平へと達する予兆だった。

カンジズを皮切りにバラエティあふれるバンドやユニットが出るわ出るわ。ロック、フォーク、テクノにタンゴにコント……。まさにプロ枠といえる「パンチの効いたブルース」や「町田謙介&ナポレオン山岸」がパワフルな演奏を聴かせたかと思えば、吉本芸人が爆笑を巻き起こし、しりあがり寿の妻でもある漫画家・西家ヒバリはおたまとエプロンの主婦ルックでヘヴィメタを熱唱。長淵剛のイタコとも称される素人青年・高田昌裕の真摯な歌声に感涙する来場者まで現れた。ここにはもはや音楽を奏でるのに素人、玄人の区別などない。それをなんの違和感もなく誰もが受け入れる楽園なのだ。

素晴らしい演奏はいくつもあったが、やはり「さるフェス」らしさを醸すのは、普通なら“イロモノ”で片づけられてしまいそうな個性派アクトたちだろう。

例えばしりあがり寿が参加する「オバンドス」。リーダーの安齋肇ら8人のメンバーが自分で工作したオリジナル楽器を持ち寄り、現代音楽らしきモノを演奏する。バケツや缶を叩いたり、輪ゴムを張ったギターらしきものをびよんびよんとかき鳴らしたり。それなのに聴こえてくる音像はアバンギャルドかつアンビエントという不思議空間が生み出される。

また「チンネンマンネン」は女性4人の“楽器演奏”ユニット。楽器を演奏なんて音楽なら当たり前のことだが、安永知澄ら漫画家やアシストタントの女の子たちが、なぜか小坊主の格好をして二人ひと組になって笛を吹く。演目は「アマリリス」や「エーデルワイス」。つたないとしか言いようのないギリギリの演奏技術に客は大喝采。客が出演者を応援する。そんな絆が生まれた美しい瞬間だ。

19時ころになると、キャパシティ約500人の新宿LOFTはほぼ満杯状態に。誰もが二つのステージを行き来しながら、いつしか「お目当てのバンドや出演者」ではなく「なんだかわからないもの」を待ち望んで楽しむ??そんなムードができあがっていた。

10時間に及んだ狂騒の宴のあとは、午前3時まで残ったツワモノたちが心地よい疲労と達成感に包まれ、みんなそろって打ち上げに突入! 出演者と観客の垣根は取り払われ、会場には平等と連帯の精神が宿る。そして後日に多くの人が「夢のようだった」と嘆息したイベントはついにお開き。各々が夜明け前の歌舞伎町へと散っていった。ただ、この宵に新宿LOFTに現出した「なんでもあり」な歓喜と混沌は、2010年1月10日開催の「さるフェス2010」に受け継がれるに違いない。

最後に、この稿ではとても書き切れなかった出演者すべてを、感謝と尊敬を込めて挙げておきたい。
(五十音順、敬称略)
アーバンギャルズ、赤い板前と人魚、茜食堂(ケータリング)、インポッシブル(吉本興業)、オバンドス(安齋肇&工作員)、GUN CLUB CHECK、カンジズ、キャラメル・コヨーテ、GREEN STRAWBERRY、COSMIC7、御当地アイドル!!キンジョリーナ、是枝みきとLa lluvia de lagrimas、西家ヒバリと枯れメタル、サイモンガー&ファンク、サイモンガー・モバイル、ザ・クレアラシルズ、シノヘン、親戚、Slash Bunches、タカダ・コーポレーション(吉本興業)、TEAM紅卍、チンネンマンネン(A組)、チンネンマンネン(B組)、剛連合、なかよし、No More Tears、のぐお+ボクデス、ハギヌン、萩原佳明、バナナシスターズ、パンチの効いたブルース、PEVO、美人寿司(ケータリング)、Poolside de ちえみ、ponytail、まじまんが、町田謙介&ナポレオン山岸、まぼろち、Richard Hendrix Band、ルミか(吉本興業)

※さるフェス’09の概要はこちらでどうぞ。
http://www.saruhage.com/sarufes/sarufes09/index.html
(written by murayama a.)

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