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不空 観◯光 北京展
開催日時 2010.4.22 - 6.22
カテゴリー  展覧会(グループ展)
場所 北京 野田当代画廊
主催 野田当代画廊、「観○光」実行委員会
2009年11月に京都で行われた『観○光(かんひかり)』の巡回展が、中国・北京で行われた。
乾いた土けむり、行き交う三輪車の村人、麻辣のにおい漂う開けっぴろげな食堂、道ばたで焼餅を買う前歯のないおじさん…中国の首都・北京と言えども、郊外はまだまだのどかな田舎の風景が広がる。
会場となった北京野田当代画廊は、そんな北京郊外の草場地芸術区にあった。ここは北京のソーホーと言われる798芸術区からほど近い芸術エリアで、農村の中に忽然と現れた倉庫風の巨大建築は、すべて画廊だという。これらは中国人クリエイター艾未未(アイ・ウェイウェイ)が2000年に作った言わば芸術村で、北京の隠れた新スポットでもある。
そんな新旧入り交じったエキサイティングな風土での展示となった。

参加作家は、京都『観○光(かんひかり)』展より抜粋メンバーの、磯辺茂樹(絵画)、榎俊幸(絵画)、ヤン・シャオミン(絵画)、中堀慎治(絵画)、富田文隆(木工芸・造形)、ジェフリー・P.ムーサス(建築)、しりあがり寿(漫画)。(敬称略)
高い天井のギャラリーに、見事に映える大きな作品群。中堀慎治のライオンの金屏風、磯辺茂樹の曼荼羅図、榎俊幸のドラゴンや鯉の滝登りなどの絵画や、ジェフリー・P.ムーサスの茶室が、日本的な格調高い空間を作りあげる。
一方2Fは、明るいガラス張りの部屋に富田文隆の椅子作品が、照明を落とした隣の部屋にしりあがり寿の映像インスタレーションが展示され、1Fとはまた違った雰囲気の空間となった。

しりあがり寿のインスタレーション『ゆるめ〜しょん』は、京都展とほとんど同様の大小さまざまな16作品のアニメ映像で構成された。『ならべうた』シリーズからは『七人の侍』『単位』『釈迦十大弟子』『アフリカ諸国』が、小さな10台のデジタルフォトフレームでは、『なわとび』6作品+『ダンス』『体操』『競馬』『F1』が上映され、壁面には、『Air』と『Shuffle』が大きく投影された。
京都展との違いは会場の光。
京都展では、歴史的な二条城の暗闇にアニメーションがぼんやり白く浮かび、重要文化財の重厚さを生かす展示になっていた。
北京展ではモダンな白い壁に合わせて、明るく清潔感のある爽やかな空間づくりをし、印象も軽やかに一変した。
(京都『観○光(かんひかり)』展はコチラを参考に →

オープニングには現地TVの取材も入り、しりあがり寿も自身の作品を語った。
「普段は新聞などに漫画を描いていますが、今回は紙から飛び出て“新しいメディアで漫画の心を伝えたい”と、このようなアニメインスタレーションの試みをしています。」
『ゆるめ〜しょん』とは?
「『ゆるめ〜しょん』は、この一連の作品のタイトルですが、“ゆるいアニメーション”という意味です。完成度だけを求めたのではない“ダメなところ”“足りないところ”それこそがモノの本質なのではないか、そんな存在が“カワイイ”というような気持ちを、漫画本来の精神である“ユーモア”でもって表わせたらいいなぁ〜、と思って作っています。」
ひときわ目を引く、壁に投影された作品『Shuffle』について。
「2007年に広島市現代美術館で始めた『ゆるめ〜しょん』シリーズの一つですが、これは象徴的なオヤジの顔を来場者にトレースしてもらい、それを高速でランダム表示させた映像作品です。ほぼ繰り返しのないパターンを永遠に紡ぎだしてゆく、新しい可能性を拓くアニメーション作品と言えるかもしれません。1枚1枚はいいかげんに描かれていても、高速でシャッフルさせるとちゃんと元のオヤジの顔に見えてくるのも興味深いですね。
これまでに、広島、島根、静岡と約3,000枚弱の絵が書き加えられたのですが、まさか異国の地、北京まで来るとは思いませんでした。ゆくゆくは世界中から一億枚のオヤジを集めてシャッフルさせたいです。」

その思惑を早くも裏付けるように、初日から『Shuffle』トレースは、子供から大人まで来場者の人気をさらった。ペンを持って描きはじめると、誰しもがいたずら心に満ちた生き生きとした表情をのぞかせた。
次回の『Shuffle』展示では、この北京展来場者の絵も加えられることだろう。
『ゆるめ〜しょん』の持つ“ゆるさ”の魅力は、万国共通なのかもしれない。
(written by Akiyama m.)

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会場の様子や、しりあがり寿のコメントなどが見られます。
動画/撮影・編集:鳥羽ジャングル
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